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先見と洞察
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前回、P・F・ドラッカーという人が極めて強い先見力をもっている、そして、「未来を読みきる力 ドラッカーとの対話」という本で小林薫氏は先見力の秘密を分析していると紹介しました。今回はその核を為す6つのファクターについて見ていこうと思います。
 i. マクロとミクロ
 ii. 歴史知識
 iii. カトリコス(普遍性)的思考と観察
 iv. 能力の多角性
 v. 思考の統合力
 vi. 基礎技能

i. 「マクロとミクロ」 - この本ではドラッカーがコンサルティングでアメリカのGMやIBMなどの大企業から日本の百貨店などを相手にしている例を挙げ、大きな大局観から、現場の細部までの視野持っている、としています。ここで注意しておきたいのが、ドラッカーは大きな局面と小さな局面、両方でのソリューションを持ち合わせている、という点です。そして、小林氏はマクロ=経済、ミクロ=経営と表現しています(これについては補足説明が本文中にありません)。だとすると、これは拡大解釈になりますが、経済という学問的に企業の運営をセオリーで捕らえる、ということと、経営というそのセオリーに則って実際に現場で運営、実践する、という関係があるといえるのではないでしょうか。つまり、理論と実践をバランスよく兼ね備えること、といえるでしょう。

ii. 「歴史知識」 − ドラッカーの書いた記事一つをとっても必ず歴史への言及があるそうです。彼は現在の「肉体労働社会から知識情報社会への変動期」を「断絶の時代」と呼んでいるのですが、こういった社会の変化は何百年ごとに起こってきたのだそうです。彼は、ヨーロッパ、アジア、アメリカの歴史に精通していたそうです。確かに、次に何が起こるかを知るためには過去に何が起こってきたかを知る必要があると思います。鶏が1ヶ月前までは毎朝コケコッコーと鳴いていたとして、最近は鳴かなくなったとしたら、何かが起こっている、もしくは起こり得ると考えるのが普通ですね。マクロとミクロが現状把握だとしたら、歴史認識は過去の把握。この二つの「現状」と「過去」をもって初めて「未来」を導き出すことができる、というのは言われてみれば当然かもしれません。ただし、これだけでは次に何が起こりえるかを想像し、言い当てるのは容易ではないと思います。

iii. 「カトリコス(普遍)的思考と観察」 − アメリカの学者(経済学、政治学、経営学など)は200年の深さでその国の社会に限定してものごとをみて判断しようとする、とこの本では述べ、もっとグローバルな視野が必要だとしています。たしかに、視野が広くなると、物事を判断するために掛け合わせるファクターが増える訳ですから、プラスになることには間違いありません。例えば、天気予報などが解り易い例だと思うのですが、あれは人工衛星という俯瞰して自国以外の領域からの天候の流れを把握できて初めてできるもので、自国の領空を下から眺めているだけでは到底台風の動きを分析して予報することなど不可能でしょうね。(天気予報はよく外れますけれども。(笑))

ここまできて平たく言ってしまえば、「広く、深く見識を持つことで先見性は養われる、」ということだと思うのですが、しかしかといって、天気予報で言えば、天候の流れを引き出す本質的なファクター(気圧の流れなど)への認識や、経済で言えば、資本の流れへの本質的な認識(それが何なのか僕は知りません!)がなければ、単に持っている広い視野というのは、先に起こることを予測するには意味を持ってこないのではないでしょうか。つまり、流れを構成しているファクターの本質的な意味合いを知る必要があると思います。

iV. 「能力の多角性」 - ドラッカーのさまざまな職歴を引き合いに出し、マルチ人間の重要性を説いています。彼がオーストリアで学んだのは、心理学、経営学、政治学と多岐にわたり、彼が経た職はというと、イギリスで、マーシャント・バンカー、投資家、ジャーナリスト、アメリカでは大学教授、企業コンサルタント、作家、といったものです。ちなみに趣味は日本美術だそうです。こういった、多様性のある経験は、幅広い視野をもたらし、先見への糧となっているはずです。そして、この経験こそが先ほど述べた、「流れを構成する本質的なファクターの認識」に繋がっているのではないでしょうか。ドラッカーはそれらを体で体感してきたといえるでしょう。

v. 「思考の統合力」 - 残念ながらこの本では多角的な能力がもたらす多様性のある経験と知識をどのようにして統合すかは書かれておりません。ただ、ドラッカーの中ではこれらが上手くまとまって先見性を豊かにしている、と述べています。おそらく、彼のようにそこまで幅広くそして深く経験を積めば自動的に頭の中で統合できるものなのでしょう。ただし、ivで述べた、本質的なものを見抜く力、洞察力がなければ知識を統合しても、間違った浅はかな思考が生まれるだけで、予想はことごとく外れるのではないでしょうか。


ちなみにこの本では洞察力については前章(関係ないところ)で、アナロジー(比喩)の上手さが一つある、としています。何かを説明するときに巧みにアナロジーを使うそうです。例えばドラッカーは、組織のあり方を、指揮者の指示と総譜に従うオーケストラ型とアドリブで個人がその時々の局面をリード・打破していくジャズ型と表現したりします。それから、他の箇所でドラッカーを観察する人、とも呼んでいます。これは個人的な見解ですが、洞察力に秀でた人間というのは、まず、観察を大事にします。

これは紹介するのは恥ずかしい例ですが、僕は昔ゲームセンターで遊んでいたことがありました。その頃、対戦型のサッカーゲームに夢中だったのですが、僕や他の人がプレイ中ずーっと傍らで見ている人がいました。そして時々プレイしてはまた、しばらくは観戦を続けていました。何日か経った後、同じゲームセンターでその人を見つけて勝負してみたのですが、十回ほど挑戦して一度も勝てなかったのを憶えています。他の挑戦者達も同様でした。彼はおそらく、遠くから多くの数のゲームを眺めることで、我々が気づかない勝利のパターンを見つけ出したのだと思います。注意したいのが、彼はただ単に観察に徹していたのではなくて、時々プレイしていました。多分彼の中での勝つ方法論を整理して、トライアンドエラーを繰り返していたのだと思います。そして、いつの日か、最強の黄金律を手に入れた。

実際世の中にいる勝ち組と呼ばれている人たちは、そう呼ばれるためのノウハウをそうやって築いていったのかもしれまん。

追って小林氏が観る先見力を構成する次のファクターを紹介していきます。
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